2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧
「――ふん、神楽坂明日菜か」 逃げ回る坊やを追っている内に、私達は学園都市の端にある橋まで連れ回されていた。 這いずり回る坊やを眺めていると、坊やのパートナーである神楽坂明日菜が現れたのだ。 「――カモ!!」「合点、姐さんっ!」 なにやら奇妙なオ…
――夜の帳が落ちる。 青かった空を、闇のカーテンが隠してしまったかのようだ。 「……あと僅かだ」 あの忌まわしい出来事から数日。 士郎は未だに深い眠りについたままだ。 茶々丸は学校を休み、片時も離れることなく看病を続けている。 私は忌々しい呪いのせ…
…………………………………………………。 …………………………………………………。 …………………………………………………。 ………………………………………おかしい。 これは…………………………どう言う事だ? 私は確かに魔法攻撃の直撃を受けた筈。 あの距離、速度、タイミング、どれをとっても回避は不可能だったのは間違いない。 だ…
士郎さんが家を出て行って数日。 アレ以来、士郎さんが家にやって来る事も、マスターから店に出向く事も無かった。 一度も顔を合わせてはいない。 マスターは表面上、士郎さんと出会う以前と変わりないように振舞ってはいるが、ふとした拍子に何かを思い出し…
「そろそろ動くぞ」 春休みも終わり、エヴァ達も2年から3年へと学年が進んだ始業式を終えた夜。 家でノンビリと夕食を楽しんでいると、エヴァが唐突に切り出した。 「なんだ、どっか行くのか?」「……いやまあ、行くと言えば行くんだが……そうではなくてだな…
――これは尋常の勝負だ。 ピリピリと張り詰めた空気の中、俺とエヴァは対峙していた。 数手、数十手先の展開を読み合い、潰し合う。 ほんの僅かな心の隙に付け込んで、相手を揺さぶり、動揺を誘う。 「――士郎、お前がここまでやるとはな。惚けた面していなが…
で。 まあ、初っ端から罠にはまり始める訳でして……。 一人の小さな女の子が先導するように、慣れた感じでヒョイヒョイ進む。 その後を高い所が苦手なのか、一人の女の子が四つん這いになって高い高い本棚の上を進んでいた。 って、上歩くのかよっ。 「こ、こ…
「――はあ、最終課題ね」 いつもの様に店を開けていると、何やら深刻そうな表情をしたネギ君がやって来た。 ネギ君が言うには、なんでも正式に先生として採用される為の最終課題なるものが学園長から出されたらしい。 「で、その内容って何なんだ?」「ええ、…
「えっと、ここら辺……か?」 ネギ君が学園に来てから5日後。 店が定休である月曜日、俺は散歩がてらに都合三人分の弁当が入ったバスケットケースを持って歩いていた。 それと言うのも、話はエヴァが昼食も暖かい物を食べたい、と言い出した事から始まった。…
次の日の朝。 俺は、タカミチさんから言われていた通りに学園長室に来ていた。 俺が到着するころには、タカミチさんも学園長もすでに揃っていたようで、俺が扉を開けるとこちらに視線をよこした。 「お早うございます」「うむ、お早う」「やあ、おはよう」 …
その日の夜、いつもより少し遅くなった俺は、閉店の片付けを終え、店のドアの鍵を閉めた。 外に出ると、夜ともなれば冷え込むのか、ヒヤリとした冷気が身に刺さる。 首に巻いた赤いマフラーで口元まで覆い隠し、急ぎ足で帰路へと着いた。 夜なのに妙に明るい…
とある日の事である。 いつもの様に休憩から帰って来た俺は、無人の店内で、これから来るであろう夕飯時の仕込みの準備をしていた。 そんな中、そこに来客を告げるベルの音と共に、珍しい人が姿を表したのだ。 「やあ、お邪魔するよ士郎君」「ああ、タカミチ…
目的地に向けて、私が若干先導する形で半歩分だけ前を歩いていた。 弓道場。 衛宮さんが案内して欲しい場所とはそこだった。 私自身は行った事は無いが、道場や茶道部で使用される茶室等といった、主に『和』関係の建物が並ぶ一角にあった筈だ。 チラリと、…
早朝、俺は郊外の森の中にいた。 それと言うのも、 「――っふ!」「おっと!」 静寂の空間に、竹と竹の当たる乾いた音が鳴り響く。 刹那が弟子(?)になってから、およそ2週間。 俺達はこうして朝の鍛練をするのが日課となっていた。 「ふう……よし! 今日は…
現状が飲み込めない。 一体どう言う事だろう。あの状況下で、一体どうして私が負けたという判定になるのだろうか。 「え? ――私が負け……です、か?」「ああ、そう言った」「どういう事……ですか?」 どこからどう見ても、私は最後の瞬間、もう少しで衛宮さん…
その日の夜、俺は店を閉め、夕食を済ませた後、エヴァの『別荘』へと来ていた。 「うわー……」 俺はアホみたいな声を出して、只々その光景に呆けるだけだった。 外は冬だと言うのに、なんなんだ、この南国は。 あらかじめ茶々丸から説明を受けていたが、流石…
朝、10時を少し回った頃、俺は店の前に立っていた。 それと言うのも、看板の取り付け作業を見守るためだ。 こうやって自分で考えた店の名前を形として見上げてみると、感慨深い物がある。 なんと言うか、こう、ふつふつと込み上げる物というか、顔がニヤけ…
翌日、俺は学園長室にやってきていた。無論、昨日言い渡された学園広域指導員の件で話を聞くためである。 しかし、こうやって再び重厚な雰囲気の扉の前に立つと、いささか気後れみたいなものをしてしまう。 昨日はエヴァがいたから平気だったが、改めてこう…
エヴァと別れた後、学園長室へ向かい用意してくれた支度金を受け取った俺は、その脚で商店街へと向かった。 目的はもちろん開店へ向けての買出しだ。 「あ、これとそれを……ああ、それです。それでこれをここの住所に届けて欲しいんですけど……。じゃあ、お願…
「着いたぞ。ここのようだな」 エヴァに案内をしてもらい、授業時間と言う事もあってか、ガラガラの電車に揺られ、徒歩で歩く事数分、寮の前にあるという店にやってきた俺達。 「へえ、良い感じの所だな」「ふむ、私も初めて見るが……確かに悪くはない」 外観…
「おい、仕事を紹介してやる。付いて来い」 朝食を終え、私がやりますからいやいやこう言うのは居候の仕事いけません貴方はマスターのお客様なのですから、というやり取りの末、茶々丸から半ば無理矢理に皿洗いの仕事を奪い片付けていると、制服姿の二人が現…
「申し訳ありません、なにぶん急だったものでこのような場所しか準備できず……」「いや、そんなに気にしなくても、俺にはこれでもう十分すぎる程ですから」 エヴァに言われた茶々丸が寝具一式を手渡してくれる。 部屋はあるにはあるらしいのだが、荷物などで…
「――すると何か? 貴様は本当にただ迷い込んだだけだと言うのか?」「だから最初に言っただろ、気が付いたらここに居たって」「馬鹿か貴様は。そのような話、普通は信じられるわけが無かろう」「……だよな。うん、自分で言っておいてアレだけど俺もそう思う」…
月明かりに照らされて踊る黄金の髪に思わず目を奪われる。 年のころは10歳くらいだろうか、目の前の少女は不機嫌そうにこちらを睨み付けている。ただ、その不機嫌そうな顔を差し引いたとしても随分と綺麗な子だ。 黒を基調とした、丈の短いスカートから伸…
――鉄を打つ音が聞こえる。 どこからともなく響く鉄の音。 近いのか、遠いのか。 規則的に、断続的に、絶え間なく、休むことなく。 繰り返し、繰り返し。 響く、響く、響く。 まるで、どこかに誘うように、導くように。 只、漂う自分はその誘いに導かれるまま…